
< 撮影機材 Hasselblad X1D 50C Hasselblad XCD 135mm f2.8 >
今日の写真は少し古い写真で、 2020年に印旛沼で撮影した。
少しだけ靄っている朝だったけど、あまり霧は深くなくて、仕掛け網の上でのんびりと鷺達が休んでいた。
実は日が昇った直後だったので、沼が鈍く金色に輝いていたし、空は一面にオレンジ色に朝焼けしていた。
本当はその色が美しいように思って撮影したのに、家に帰ってPCで展開したら色が濃厚過ぎて雑味があるように感じて、ボツにしていた写真だった。
それからずっと放置していたのだけれど、ふと思い立ってモノクロームにしたら、 あの時の穏やかで静寂な時間が戻って来たような気がした。
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さて、皆さんはRAW画像をモノクロームに変換する時にどんな風にしていらっしゃいますか?
私はレタッチをする時にはAdbe Lightroomか、もしくはHasselbladのPhocus のどちらかを使っています。
LightroomとPhocusではモノクロームへの変換の仕方がまったく違うのですが、
おそらく、Phocusを使っている方はあまりいらっしゃらないと思うので、
Lightroomの場合でお話ししたいと思います。
Lightroomでモノクロ変換する場合、基本補正のトップにある「白黒」ボタンを押して一気にモノクロ変換するか、「自然な彩度」と「彩度」のスライダーをゼロに持っていってモノクロ変換する場合の二通りあるかと思うのですが、この二つの方法で、出来上がったモノクロームのグレーの濃度が微妙に違うことに気付いていらっしゃいますか?
実は、「白黒」ボタンでモノクロ変換した場合は三原色全体がニュートラルな柔らかい中間色グレーになり、「自然な彩度」と「彩度」スライダーをゼロにした場合は、赤はそれとほぼ同じくらいの濃度なのですが、緑は白っぽく、青は濃いめに出ます。
例えば、樹々が茂っていて全体がグリーンの写真の場合、または「木」が主役の写真の場合は、「彩度」をゼロにしてモノクロ変換すると葉っぱが白っぽく飛んでしまう可能性があります。
逆に青空のコントラストを明確にしたい場合は「彩度」スライダーでモノクロ変換した方がメリハリのある画像になるのです。
どちらにせよ、「白黒ミックス」のスライダーで各色の濃度の調節ができるので、そんなに神経質にならなくてもいいのですが・・・・
昔、モノクロフィルムを使って撮っていた時は、この調整をフィルターワークで撮影の時にやっていたのだから、つくづく大変だったなと思いますが、実は面白さもあったように思います。
赤いフィルター 赤色の波長の光だけ通すので、青が黒に近くなり、コントラスト高めにドラマチックに撮れます。
黄色いフィルター 黄色、緑、赤色の波長の光をだけを通すので、それらの色が明るくなり、特に肌色が明るく撮れ、ポートレート向き
黄緑のフィルター 黄色のフィルターとほぼ同じ効果ですが、特に緑色のトーンが明るくなります。
緑のフィルター 風景の中の緑の部分が見えなくなり、山や木々の縁取りの影だけが写ります。
青のフィルター 赤が際立って濃く写ります。霧がかかった青みの強い風景では、全体がふんわりと情緒的になります。
実際に多く使われるのは、コントラストを出すための赤いフィルターと、ポートレート用のオレンジか黄色のフィルターでしたが、
露出とのバランスもあり、効果の程がプリントにしてみるまでわからなかったことから、どきどきしながら使って、フィルターを変えたり露出を変えたりしながら何枚も撮ったものです。
カラーフィルムに使う効果フィルターと違って、モノクローム用のフィルターは写真の濃度そのものを決定づける必需品でした。
だから、デジタルになって、後からグレーの濃度を適度に調整できるなんて本当に革命的なことだなと、モノクロ変換しながら感慨に耽っています。
でもその一方で、フィルターを使いながら頭の中に出来上がりの画像を思い浮かべて、その通りに写っているかどうかワクワクしながらプリントの仕上がりを待ったのも、やはり懐かしい気がしています。
便利になった分、楽しみも減ったような・・・複雑な心境です。