2021.11.22
< 撮影機材 LEICA Q-P 2018年10月 上高地 大正池 >
上高地は大好きな場所で、今までも何度も足を運んだ。
けれど、上高地には実は色々な顔があって、その時々、目的によって滞在の仕方がいつも違う。
母や家族と夏を過ごしにやって来るときは、宿泊はたいてい上高地帝国ホテルで、静かに森の中でのんびりと過ごすし、
目的地が槍沢や涸沢や穂高への山行の時は、山仲間とわくわくしながら河童橋の脇の五千尺ホテルや西糸屋さんに宿をとって、夜は宿の御主人と山談議を弾ませ、そして翌朝、横尾を目指して重いザックを背負いながら梓川沿いの道を黙々と歩く。
そして、この時みたいに撮影が目的の時は、絶対に大正池ホテルに決まっている。
大正池にはこのホテルが一軒しかないので、夜になるれば、闇の中に本当に美しい星空が広がるし、朝目覚めれば眼下に朝靄の大正池が広がっていて、田代池までも近いから、撮影にはここ以外のロケーションが思いつかないくらい。
この写真は3年前の10月半ばの撮影で、穂高連峰から西の方角、焼岳から続く割谷山、そして西穂へと続く稜線を正面に写した。
風のない静かな朝で、大正池の水面が鏡のようになっていた。
たいていは北を向いて、連なる穂高連邦を背景に撮影することが殆どだけれど、この時は仲間と一緒に泊まった西穂高の山荘のことが不意に思い出されて、いつもとは少し違う方へカメラを向けたくなった。
この頃から、上高地の秋は瞬く間に深まって、1か月後の閉山を迎えるころの早朝には、池の周りの森も樹氷に覆われて初冬の様相になる。
< 撮影機材 Hasslblad X1D 50C Hasslblad XCD 45mm f3.5 2019年11月 上高地 >
同じ年の写真ではないのだけれど、こうして並べてみると、たった1か月の間の季節の時間が上高地の森を雄々しく変えてしまったのが良くわかる。
これから僅かな間に、山も森も湖も厳冬期の冷たい雪に覆われてしまうだろう。
人を寄せ付けない厳しい季節に備えて、この撮影の次の日に上高地は全ての宿が閉じて閉山した。
本当は、真冬に徒歩で入山してみたいと今でも思っているけれど、なかなか難しいかもしれない。
代わりに、春の目覚めの季節にまた訪れて、撮影したいと思っている。